パナソニック株式会社は2018年12月、東京・有明から浜離宮に、社内外とのコラボレーションを推進する「Panasonic Laboratory Tokyo(以下PLT)」をリニューアル移転しました。
浜離宮の新たなPLTのコンセプトは『共創と集中の両立』。一見、相反するように思えるテーマの両立を目指した背景は何だったのでしょうか。
(左:PLT現所長仙田圭一氏、右:元PLT所長井上あきの氏)
「2016年、有明にPLTを新設したときに掲げたコンセプトは『共創』だけだったんです。社外の方々にもたくさん来ていただき、新しいコラボレーションの場になってはいたのですが、成果に繋げていく難しさも知りました。同じ場所に集まって同じ時間を過ごすだけではダメだと気づいたんです。
人が集まるだけではなく、多様な知恵を集めて、イノベーションにまで高めていかなければなりません。そのためには一人ひとりの考えを深める時間、つまり「集中」する時間が必要だと考え、『共創と集中の両立』を新しいコンセプトに据えました」(リニューアルオープン当時、イノベーション戦略室 PLT東京所長を務めた井上あきのさん)
新コンセプトのオフィス監修を手がけたのは、予防医学者の石川善樹先生。デザインには、世界一集中できるオフィス「Think Lab」を運営するJINSの井上一鷹さんの知見も活用されました。
イノベーションを生むオフィスをつくるために石川善樹先生が重視したのは、オフィス空間を究極にまで自然に近づけること。朝夕で光の色が変わり、室温や香りも変化する……五感に‟揺らぎ”を与えることで創造性が刺激され、クリエイティビティが生まれやすいオフィスになる。最新の研究結果と知見が、このPLTにつめこまれました。
PLTのオフィスエリアは、『Ideation Lounge』『Launch HUB』『Kizashi HUB』『Deep Think Room』の4つに分かれており、それぞれ役割が異なります。
Ideation Lounge
Launch HUB
Kizashi HUB
Deep Think Room
「石川先生に監修いただくまでは、正直な話、『イノベーションを生むオフィス=共創の場』としか考えていませんでした。石川先生とディスカッションをするなかで、‟イノベーションとは何か”について解像度をあげて考えられるように。そして、共創や集中に至るまでの‟準備”が重要だと気づかされたのです」(イノベーション推進部門 PLT現所長の仙田圭一さん)
まず入り口の扉をあけると広がるのは、通勤のストレスをリセットする役割を担う空間『Ideation Lounge』。続いて、雑談やブレインストーミングをする『Launch HUB』や、社外の人も含めた共創の場である『Kizashi HUB』を通り、深く集中する場である『Deep Think Room』にたどりつきます。この4空間は、神社の鳥居をくぐり、ジャリジャリと玉砂利をふみながら参道を歩き、一本道を通って本殿にたどりつくイメージでつくられたそう。共創や集中に至るまでの準備が十分に行えるように計算されています。
オフィスをリニューアルし、「想定外だったこと」を聞くと、お二人からこんな答えが返ってきました。
「入口にある『Ideation Lounge』は、通勤のストレスをリセットし、モードを切り替えるための空間なのですが、この場所がいちばん気持ちよく、大好きだと言う人が多いんです。それぞれにお気に入りの定位置があり、なかには一日中、ここで仕事をしている人もいるくらい。
社内にファンが多い、Ideation Lounge
石川先生からハイレゾの自然音がいいとR-LIVEを紹介してもらい、『Ideation Lounge』にR-LIVEを導入しました。この空間が、唯一“音”のある場所。川のせせらぎや鳥の鳴き声など自然の音が聴こえ、たくさんの緑があり、香りがある……まさに五感の揺らぎがトータルプロデュースされている場所なんです。出社をして、扉を開けたときに、『ああ気持ちがいい場所だな』と、純粋に思える空間になっていますね」